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ってしまうと、その後、いくら恵まれた条件を与えても個体数は同復せず、絶滅の道を歩むのが普通である。一国の産業は動物の種とはちがうが、企業数や従業員数が、ある数を下回ると、再生させるのは非常に困難であることは同じてあるう。

 

浮上した国際船舶制度
こうした危機に対し、運輸省の外航海運・船員問題懇談会は日本籍船、日本人船員を確保するため、欧州各国で導入、実施されている総合的なフラッギングアウト(自国籍船の海外への流出)防止策である国際船舶登録制度を参考に「国際船舶制度」の創設を提言した。この国際船舶とは、もっぱら国際航海に従事する日本籍商船をいい、これらの船にパッケージで政策を適用し、国際競争力を高めようというものであった。
その制度の内容は?国際船舶特別税制(提案のなかには同際船舶の固定資産税、登録免許税を非課税あるいは便宜置籍国水準に下げるものも含まれていた)?日木人船員特別税制?外国人船員と日本人船員のコスト差の国家の補てん?国際船舶に配乗する船長、機関長を日本人船員とする原則?国際船舶に配乗する外国人船員確保のために外国語による海抜資格制度−などの実施という広範なものだった。
運輸省や業界は必要な法制度の整備、平成八年度政府予算と税制改革での一連の対策の実施を強く働きかけた。しかし、海上運送法の一部改正で「同際船舶の法制上の定義」はできたものの決定した政府予算では制度そのものを認めただけ、税制改正では船舶の登録免許税と固定資産税の軽減措置が部分的に認められただけで、運輸省や業界の意向が十分貫かれたとはいいがたい結果になってしまった。
このため今年三月二十八日、海運造船合理化審議会の海運対策部会と小委員会が開催され、国際船舶制度の本格実施と、いっそうの制度の拡充が求められるとして、国際経済環境の変化を踏まえた幅広い検討を続けることになった。

 

SECOJに船舶制度推進調査委員会設置
この具体的現われのひとつとして、日本船員福利雇用促進センター(SECOJ)に、国際船舶制度推進調査委員会(委賞長=谷川久成燦大学教授)が設置された。この委員会は国際船舶制度を円滑に実施、拡充していくための調査、問題点の整理、分析、具体的解決策の検討を行うが、海造審の議論に資するための問題点、解決策の整理も目的としている。学識中立委員のほかに日本船上協会から複数の政策幹事、全日本海員組合から国際汽船局長を含む複数の幹部が委員となり、毎月会合が開かれている。
十月末までの委員会で検討された事項は、日本籍船、日木人船員の必要性の考え方の整理、労使双方の主張の明確化などのほかに定期船業界をめぐる事業環境、荷主の船社選択のポイント、船舶の海外貨渡と船員配乗についての制度などの勉強も行った。
九月には英国、フランス、スペイン、ノルウェー、スウェーデン各国とEUといった自国籍船の減少に悩む欧州北進海運国について調査を行うとともに、将来の日本人船員数の検討も始めている。
委員会には全日本海員組合、委員会の事務局である三和総研(二案提出)、運輸省船員部、日本船上協会の五つの船員数の将来の試算が提出されている。全日本海員組合は日本商船隊が今後十年間、二千隻を維持すると仮定、船長と機関長を千隻に配乗するとし、昇進までの期間や予備員などを考慮して六千五百人が必要としている。三和総研は日本人の最低水準の生活維持に必要な貿易量の仮定などから三千〜六千人としている。運輸省船員部は新規採用者数と年齢別減少率を設定し、新規採用百人の場合は二〇一〇年の千八百二十五人を底として船員数は増勢に転じるとしている。船主協会は最近の採用状況が今後も継続

 

 

 

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